短編映画「掛軸の作り方」完成!

日記の書き方をすっかり忘れてしまってる表具師です。(u_u)
昨年の3月にスイスの番組制作会社にお勤めの Niko Kitsakis さんが以下の Flickr のセットを御覧になり、掛軸の作り方に興味を持たれてメールを送ってこられました。

Nikoさんは、日本の文化に興味をお持ちで、過去に何度か来日されており、5月にも来日して1ヶ月ほど滞在し、いくつかの映像作品を撮影しようと考えていたようです。何度かメールのやり取りを重ね、掛軸の歴史と作り方をテーマに短編映画(?)を作ろうという話になったんです。
ただ、実際に掛軸を作るとなると

  1. 裂の取り合わせを決めて、本紙と裂の裏打ちを行う日
  2. 乾燥期間1週間〜2週間
  3. 付回しの作業と、総裏を打つ日
  4. 乾燥作業2週間〜3ヶ月
  5. 軸棒などを付ける仕上げの日

というように、最低でも1ヶ月近くかかりますので、Nikoさんが日本に滞在している間に合計3回、うちの店に通ってきてもらい撮影するしか方法がありません。ところが、今回、Nikoさんが宝塚に滞在できるのは3日間しかないとのことなので、苦肉の策として乾燥期間を省くため、料理番組方式で各工程に合わせてあらかじめ用意してあるものに差し替えて、3日間で一気に撮影する方法を取りました。
Nikoさんが宝塚に来られたのは5月7日(月)のお昼前で、簡単な自己紹介の後、そこから一気に撮影が始まりました。
まず、本紙や、あらかじめ取り分けてあった裂に肌裏を打ち仮張りにかけました。本来はこの状態で半日から3日程度乾かすのですが、それを省略するためにあらかじめ肌裏を打って乾かしてあった別の本紙と裂をはがし、増裏を打って仮張りにかけました。これで1日目の作業は終わりです。その後、色々なインタビューを撮影し、1日目の撮影は終わりました。
2日目は既に増裏を打って1週間以上乾燥させていた本紙と裂を使って付回しの作業にかかりました。途中、宝塚駅周辺の映像を撮りに行ったり、2階の座敷でインタビューを受けたりしながらも、なんとか付回しを終え、総裏を打って仮張りにかけて、風帯を作って2日目の撮影も無事に終わりました。
3日目、Nikoさんは少し体調を崩し、ゆっくり目のスタートになりました。3日目は、あらかじめ総裏を打って仮張りにかけ、10日間ほど乾燥させておいた掛軸を使って仕上げ工程を撮影しました。まず軸棒と八双を作り、仮張りからはがして仕上げまで、撮影は一気に進みました。その後、撮り忘れのインタビューを押さえ、3日間にわたる撮影を終えました。
撮影後、Nikoさんは次の撮影地(東北)に向かうため東京へ向かい、5月末に日本を離れました。
それから約1年、Nikoさんは仕事の合間に映像の編集をし、僕がしゃべった内容を日本語の先生と翻訳して字幕を付け、先月(4月16日)、再来日した際に最終的な音の調整を彼の友人に依頼し、5月1日までの短い滞在期間にもかかわらず、4月22日に宝塚まで完成間近の映像を見せに来てくれました。そして、今朝、その映像作品が完成し、ネットに CC BY-NC-ND 3.0 のライセンスアップされました。その映像がこれです。

彼は、日本の文化に興味を持っていて、その他にもいくつかの短編映画(映像)を作っています。もし興味がおありでしたら、他の作品も観てあげて下さいね。
http://www.nubero.ch/