第34回 青年技能者技能競技大会

今年も懲りずに競技大会に出品しました。

審査は例年どおり今日の午後に行われ、結果はなんとなんと「知事賞」でした。一昨年の「努力賞」、昨年の「兵庫県職業能力開発協会賞」に続き3年連続の入賞、しかも今年は第一位ですよ。正直、めちゃめちゃ嬉しいです。やっぱり教授の書作品と相性が良いんだ。(笑)

嬉しいので、調子に乗って制作意図などを書いちゃいますね。

制作意図など

課題の本紙は3年連続で魚住卿山先生が書かれたもので、僕は抽選で「風林火山」を引きました。

今年のNHK大河ドラマが「風林火山」なので、作品にNHKのロゴを入れようかなんて冗談を言いながら、8月下旬から制作に取り掛かったわけですが、出品する限りは昨年の「兵庫県職業能力開発協会賞」よりも上を目指そうと、かなり真面目に様式やデザインを考えました。

風林火山」は、NHK大河ドラマでも御存知のとおり、武田信玄の陣旗で有名ですが、信玄よりも200年前の南北朝時代に、北畠顕家が初めて陣旗として使っていて、信玄は顕家を真似たもののようです。武田信玄清和源氏(河内源氏)の傍系・甲斐源氏嫡流武家北畠顕家村上源氏(源氏長者)の庶流で公家。家柄も北畠顕家の方が上ですので、今回は北畠顕家を取り上げることにしました。

北畠顕家を取り上げると言っても、主役は魚住先生の本紙ですので、創作(造形)表具は似合いません。基本は大和表具の三段表装(行の行)で、あまり主張しないように、無地の裂(圭絹)*1を使い、家紋を刳り貫いて中廻しの上下に入れることに決めました。結果、勝負できるのは裂の裏打と刳り貫きの技術のみで、他の小技は通用しなくなりました。

北畠氏の家紋は「笹竜胆」です。「笹竜胆」の紋は源氏の代表紋と言われますが、村上源氏(公家源氏)の紋で、本来は清和源氏(武家源氏)の紋ではありません。ただ、江戸時代にそのあたりが曖昧になり、源氏の末裔と称する武士が、挙って家紋に使ったようで、現在では清和源氏の紋だと思われているようです。ちなみに、武田氏の家紋は御存知のとおり「武田菱」です。「武田菱」は「割菱(四つ菱)」の一種ですが、線が細いのが特徴です。「笹竜胆」で北畠顕家を、「武田菱」で武田信玄を表そうという訳ですが、もし、北畠顕家が分かってもらえなくても、「笹竜胆」が源氏の代表紋だと思ってる人は武田家の紋だと思ってもらえるでしょう。(ちょっとズルいですね。(笑) )

以上が今年の作品の制作意図(?)です。実際の作品は、天地に焦げ茶色の圭絹、中廻しには薄紫の圭絹を使い、中廻しの上に「笹竜胆」、下に「武田菱」を1つずつ入れ、一文字と風帯に山模様の金襴を使って三段表装(行の行)に仕立て、時代色のついた象牙代用の軸先を使いました。作品の写真は後日アップするのでお楽しみに。

*1:繭の外皮から引き出した荒い糸を横糸にして織った絹。