水仕事

昨日のタイトル*1から「水」が続いてますね。(笑) 今日は、ちょっと表具師っぽい日記にしようと思います。(無理かも…)
表具の仕事は、よく水を使います。今日もいっぱい使いました。普通は、紙と水って相性が良くないと思いません? 僕は、子供の頃から見てるので、なんとも思わなかったのですが、一般には、紙は濡れると破れるという認識があるようです*2
確かに、障子を剥がす時には水を使いますが、それは張ってある糊を溶かす為で、紙を破る為では在りません。表具で使う紙は「和紙」です。和紙は、紙の繊維が洋紙*3より長く、複雑に絡み合っているので、濡らしてもトイレットペーパーのように溶けたりしません*4。ただし、繊維の間に水を含むので、少し分厚くなり、大きくなります。そして乾く時に、それぞれの繊維が再び絡まりあって縮みます。濡らすと伸びて、乾くと縮む。この性質を利用して、襖や障子などの弛みや皺を無くすんです*5。この和紙の性質も、何度も濡れたり乾いたりするうちに、伸縮率が小さくなって行き一定のところで落ち着きます。掛軸などは、狂い無くピシッと掛かるようにするために、仕上げ前の段階(仮張りにかけた状態)で、最低1〜3ヶ月、長い時で1年間置いておきます。その間、天候による湿度の変化で伸びたり縮んだりさせて、落ち着くのを待つのです。
梅雨時は、湿度が高いので、紙の乾きが遅く、作業がしやすいので僕は好きです。でも、掛軸の仕上げは、湿度の低い良く晴れた日じゃないと難しいので、この時期はお天気が気になってしょうがないですね*6。障子を剥がす時に水を使うのも、この時期がちょうど良い感じです。年末は、悲しくなるくらい水が冷たいし、うちの店の場合、外でする作業なので、夏は暑いし、冬は寒いし、春は花粉症だとつらいし(僕は違うけど)、やっぱりこの時期が一番。
今日は、「水」について書いてみました。

*1:はてなでは id:hyougushi:20020616#p1 になります

*2:金魚すくいの影響かも…。(笑)

*3:パルプから作る普通の紙

*4:これは極端な例ですね

*5:だから、紙を「貼る」のではなく「張る」と書くんですね

*6:今年は、梅雨入り前に雨が良く降って、梅雨入り後はあまり降らないので、変な感じです