作品の制作意図など

今年も懲りずに青年技能者技能競技大会に出品します。40歳のタイムリミットまでに創作(造形)表具以外で入賞できるか、もう殆ど意地になっています。(笑)
今年の本紙には「万里無片雲」と書かれています。見渡す限り雲ひとつ無い空ですから、イメージするのは秋晴れの空。綺麗な茜色の夕焼けとか、台風一過の清々しい青空です。でも、この「万里無片雲」はもう少し奥の深い禅語で、秋空のように澄み渡った覚りの境地をあらわしています。そして、当然の事ながら、禅と関係の深い茶道でも、秋の茶会などで好まれて掛けられる禅語の一つなんです。
そこで禅の覚りに通じる侘び茶を追求した秋の茶会に掛けられる茶掛けを目指すことにしました。まず思い浮かべたのが以下のようなシーンです。
全ての無駄を削ぎ落とした簡素な茶室に通された時、床の間を見るとこの掛軸が。土壁に溶け込むような配色で、まず本紙の「万里無片雲」に目が行きます。そして、ふと本紙の周りの裂を見ると、秋を感じる瓢箪の模様……。
これで亭主の意図が、禅の覚りに通じる侘び茶を追求した秋の茶会だと読み取れそうです。ただ、僕の制作意図を審査員の皆さんが読み取ってくれるかどうかは判りませんが……。(笑)
単純に作品だけを見た場合、地味で、目を引く要素は殆どありませんから、仕事の丁寧さ(掛軸としての仕上がりの良さ)だけしかアピールできなくなってしまいました。これで勝負するのはちょっと辛いかもしれないですが、今できる全てを注ぎ込んだので満足してます。(審査結果は後日)