富士章取得年限について

ある地区の代表スカウトから、兵庫連盟がガイドラインとして定めている富士章取得年限について全国基準(?)の20歳まで引き上げる事はできないかと言う問題提議がありました。

ご存知の方も多いとは思いますが、兵庫連盟ではベンチャースカウト部門は18歳までとし、富士章取得は高校3年に相当する年の1月15日までに申請することというガイドラインを定めています。教育規定上はVS活動は20歳未満で、18歳以上はローバースカウト隊に上進できることになっているので、殆どの県連では、20歳までのVS活動を認め、富士章取得年限も特に設けず、20歳の1月15日まで富士章取得申請を出せるようです。彼らにとっては、この2年の差が不公平だと感じたのでしょう。

結論から言うと、兵庫連盟では、個々の事情により3月末までの申請を受け付けることはありますが、今後もガイドラインを変更する予定はないです。

数の論理からすると、兵庫連盟が特殊で、厳しい基準を設けており、不公平感があると言わざるを得ませんが、兵庫連盟の設定しているガイドラインはVS部門発足の趣旨に照らして、特に厳しいものではないと私は考えます。本来のVS部門の富士章の趣旨から考えると、兵庫連盟の対応が正しいのであり、他の県連盟が甘過ぎると私は思いますし、その甘い基準でも富士章取得者が出ない県連のVS隊長は、正直、ベンチャーシステムを理解されていないのではないかなと思ったりもします。

そもそもVS部門が20歳までになった背景には、RS部門のない団・地区・県連のスカウトにも、より高度な活動をする機会を与えるためにRS部門に代わるものとして旧シニアースカウト部門を2年延長するという考えがありました。したがって、団にRS隊がある場合や、RS部門を理解している指導者に恵まれている地区および県連では、18歳でRS隊への上進を選択することが望ましいとされていました*1。そして、VS隊からRS隊への上進時期については、各県連盟がガイドラインを設けて、18歳に制限してもよい事になっていました。(ただし、これは教育規定において明文化されてはいません。)

また、富士章に関しても、御存知の通り、旧SS部門における最高到達点から、通過点へと位置付けが変わりました。それは、VS部門の後期(19歳〜20歳)は、RS部門の代行であるという意味から、富士章取得後の高度なプロジェクト(4つ目〜7つ目のアワード)に挑戦する時期であるという考えがベースにあります。つまり、VS部門になっても、高校生年代の内に富士章は取得するべきものであり、20歳ギリギリまでかかって取得するようなものではないのです。一番あってはならないのが、高校3年間をまるごと休隊し、大学に入って暇ができてから一気にアワード3つと技能章を取り、信仰に近づくための奉仕活動でお茶を濁して20歳で富士章を取るパターンですね。(笑) その辺りの誤解が多いので、平成18年に改訂されたベンチャースカウトハンドブックには、38ページに進歩のマイルストーンの例として、高校3年生の9月に富士章を取得し、その後、パーフェクトを目指してチャレンジするように書かれています。(ただ、これも教育規定で明文化されていませんので、VS部門設立時の経緯などを知らない人にとっては、本来の趣旨など解るはずがないですよね。)

上記の理由から、兵庫連盟における富士章取得年限の制限には根拠があり、本来のVS部門の趣旨に照らしても逸脱したものでないということが御理解いただけたでしょうか?

これらの内容は、旧SS部門からVS部門への移行時期に、その部門の指導者をされていた方にとっては、さんざん議論された事なので、あたりまえの知識だったのですが、新しくVS隊の指導者になった方にとっては、現場のVS隊指導者間でガイドライン設定の趣旨が引継ぎされない限り知る由もなく、不合理な制限と思われている方もいらっしゃるかと思います。また、今回、地区フォーラムを経て参加した代表スカウトからこのような質問が出たことにより、VS部門担当の地区(副)コミッショナーでさえ、ガイドライン設定の趣旨をご存知ないということが判明しました*2。これを機会に、今後は、地区コミッショナーを通じて、各団への期限設定趣旨の周知徹底を図ってゆかねばならないものと思います。それと同時に、来年、神戸で開催される全国大会などで、全国に対して、兵庫連盟のガイドラインの趣旨を発信してゆく必要があると私は考えます。(とは言うものの、この辺の話になると、一介の地区副コミッショナーである私の権能をはるかに超えてしまうのですが……。)

ただ、今回、スカウトから問題提議されたことで、県フォーラムに参加されていたVS部門の指導者の皆さんで、急遽、ラウンドテーブルが開催され、スカウト以上に、指導者にとっても有意義なフォーラムになりました。 そういう意味では、件の地区代表スカウトが勇気を出して一石を投じてくれたことに感謝しています。

*1:平成10年頃のスカウティング誌に「RS部門活性化のために」という感じの特集記事が出たと記憶しています。

*2:ご存知であれば、地区フォーラムの時点で、ガイドラインの趣旨を説明されているはずですから。