満中陰法要

今日は9月4日に往生した豊中大叔父満中陰法要豊中駅前の四明山看景寺(真宗大谷派)で午前11時から営まれました。
大叔父の葬儀の日の日記でも少し触れましたが、還骨法要以降の仏事は遺族が主催します。しかし、他の宗派のように故人に対する追善供養といった意味はなく、故人を縁として、お念仏の教えを聴聞する仏事として営まれます。あえて言うなら追悼法要でしょうか。
法要の後、青木家のお墓に納骨を済ませ、お寺に戻ってお斎をよばれ、生前の大叔父の想い出話をし、故人を偲びました。

「中陰」豆知識

「中陰」というのは仏教が生まれたインドの思想で、六道輪廻転生する中の死亡して次の世に生まれ変わるまでの期間を指します。なぜ49日なのかと言うと、迷いの世界である六道から悟りの世界(7番目の世界)へ解脱する事が究極の救いですから、古代インドでは「7」という数字には特別な意味がありました。だから、その7を7回繰り返して49日になったのだと考えられています。
この「インド版中陰」が中国に伝わり十王信仰と結び付きました。すなわち、死後7日毎に冥界の王の裁きを受け、六道の何れかに生まれ変わるというものです。初七日には泰広王の審判を受け、行き先の定まらない人は三途の川を渡って、二七日初江王の審判を受けます。ここでも定まらないと順に、三七日宋帝王四七日五官王五七日閻魔王六七日変成王七七日泰山王の審判を受けるそうです。基本的にはここで満中陰なのですが、まだ7人しか登場していませんよね。とりあえずここまでがインドの民間信仰でここからが中国の民間信仰になります。
中国に入ると49日を過ぎても行方が定まらない人がいるのではないかという考えが生まれました。百カ日を中国では「卒哭(そつこく)」というのですが、その日に平等王の裁きを受けます。ここでも行き先の定まらない人や、既に六道輪廻が決まった人の再審理として、一周忌都市王の下に行くとされます。ここで遺族が追善供養を頑張ると、一周忌の功徳により三回忌の五動転輪王に送られ、充分に追善供養をすれば成仏できるそうです。
この「中国版中陰」が日本に伝わってさらに神道の思想や民間信仰と結び付き、十三佛信仰に発展します。先の「十王」は、それぞれ、不動明王、釈迦如来文殊菩薩普賢菩薩地蔵菩薩弥勒菩薩薬師如来、観世音菩薩、勢至菩薩阿弥陀如来に置き換わり、七回忌阿閦如来十三回忌大日如来三十三回忌虚空蔵菩薩が加わりました。この中陰から三十三回忌までの十三仏事は一般的に死者に対する追善法要の意味を持って営まれます。
近世になって、十七回忌二十五回忌が加わり十五仏事になったり、二十五回忌の替わりに二十三回忌二十七回忌の十六仏事を営む地方もあります。しかし、ここで重要なのは十三仏事が十五になっても十六になっても最後が三十三回忌ということです。
神道では死の直後の死者の霊を「死霊」と呼ぶそうです。死霊は死穢という個性を持っていて、子孫がこの死霊を祀ることで死穢が浄化され次第に個性を失い、清い和やかな「祖霊」になるそうです。「死霊」が「祖霊」に浄化されるまでの期間が33年(32年目)かかるそうで、これが三十三回忌の由来と考えられています。また、「祖霊」がさらに浄化され「先祖神(氏神)」に昇華されるのに50年かかるらしく、五十回忌も仏事に取り込まれています。(神道については詳しくないので間違っているかもしれません) つまり、追善法要は仏教のオリジナルではなく中国や日本の民間信仰神道が起源なんですね。

真宗門徒にとっての「中陰」と年回法要

以上のような事から浄土真宗では、「中陰」や「年忌法要」がしきたりとして存在する事は認めますが、仏教の思想ではありませんから教義としては認めていません。臨終と同時に阿弥陀如来の本願力により極楽浄土に往生していますので、「中陰」という期間が存在しないのです。
ですが、我々浄土真宗門徒も中陰の法事や年回法要を勤めています。そこには、しきたりだけでない理由があるんです。それは、大切な人の死を厳粛に受け止めつつ故人を偲び、人生の依り所としてお念仏の教えを聞き、阿弥陀如来の徳をたたえ、報恩感謝の誠を表すための大切な法事だからです。言ってみれば、「中陰」のしきたりを上手く利用し、浄土真宗の教えを再確認するための法要として、この中陰や年回法要を大切にしてきたのでしょう。
ですから浄土真宗の法事では、お坊さんが来てお経だけ称えてお布施を貰って帰るといった形だけの法事は行わないのが原則です。基本的には参列者全員でお経を上げ、法話聴聞するんです。最近は法事が土日祝日に集中するので、本格的な法話はお寺で月1回程度開かれる説法会で聴聞する事も多くなってきましたが、浄土真宗は聞法が基本ですから簡単なお話は必ずあります。と言っても、お寺さんによっては「御文章」の拝読のみの場合もあるようですが……。まあこれが本音と建前ってヤツですね。(笑)