研修旅行(1日目)

阪神表具内装協会の研修旅行で、1泊2日で奈良に行ってきました。西宮→伊丹→川西→宝塚の順に参加者を乗せ、バスは奈良に向かいました。

天平の甍」は今……

まず目指した先は「律宗総本山 唐招提寺」。現在、金堂が解体修理中で、かなり残念な状態でした。また、金堂内陣の本尊である盧舎那佛坐像と本当に手が千本ある千手観音立像も修理中、薬師如来立像は奈良国立博物館に出張中でした。修理が終わって「天平の甍」を見る事が出来るのは平成21年だそうです。
御影堂の鑑真和上像と東山魁夷の障壁画も6月5日〜7日の3日間しか見られないのであまり見所はないと思われるかもしれませんが、講堂には未来佛である弥勒如来坐像を中心として重文クラスの仏像が安置されています。さらに、修理中の金堂から国宝の四天王と梵天帝釈天疎開して来ていますから、凄い状態ですよ。(笑)
その他、東大寺正倉院よりも古い校倉造の経蔵・宝蔵が地味に建ってたりして、意外と見るところがあるんです。平成21年にはまた来ようと思いました。
もう少しゆっくりと見ていたかったけど、雨が降り出したのでバスに戻りました。

黒光りする仏像

次に目指したのは「法相宗大本山 薬師寺」。平山郁夫の大唐西域壁画がある玄奘三蔵院伽藍は春の特別公開が終わったので見られませんでしたが、金堂の薬師三尊像と東院堂の聖観音菩薩立像は必見です。
薬師三尊像はブロンズ製なのですが、金メッキが火災等で千数百年かけて変色し、全身が黒光りしてるんです。脇侍の日光菩薩月光菩薩も同様に黒光りしていて、薬師三尊像の前から暫く離れられなくなりました。
金堂の北に講堂があり、そこにも薬師三尊像が安置されているのですが、金堂の三尊像に比べると人気が無いらしく、講堂内が空いていたのでじっくりと観る事が出来ました。如来の三十二相の一つである指の間の水掻き(縵網相)までしっかりと造り込んでいるのを見つけ、一人で感心していました*1
薬師寺の仏像が素晴らしいのはこれだけではなくて、僕の中で一番のお薦めは東院堂の聖観音菩薩立像です。この観音像、施無畏印を結ぶ手が左右逆なんですよ*2
1日中いても飽きないのですが、昼食の時間がきたので仕方なく昼食場所である「萬京」に向かいました。秋の特別公開の時期にまた来ようと思います。

仮にも客なんだから

昼食後、少し時間があったので、「がんこ一徹長屋」という伝統を受け継いだ大和の6人の匠が、こだわりの技を存分に魅せる、ほんまもんの職人長屋を見に行く事にしました。
ところが着いてビックリ、入場料が要るんですよ。まぁ、「墨の資料館」の入館料込みの値段だから払って入りましたが、土産物屋が6件並んでいるだけです。仕事してへんやん!
中に表具屋さんもあったのですが、仕事をしている様子がありません。不景気で仕事が無いのは判りますが、職人さんはネット中。お店に入るなり睨まれてしまいました。
その後、応対をしてくれる訳でもなく、彼は最後までパソコンの前から離れませんでした。パンフレットに書や絵など作品の持ち味を最大限に引き出すあざやかな手さばきは、他ではお目にかかれませんと書いていたので期待したのに、ここでもお目にかかれませんでした*3。(笑)

慈光院

慈光院本堂より書院を望む

「墨の資料館」を見学した後、バスに乗って大和郡山の「臨済宗大徳寺派 慈光院」へ。慈光院は茶人「片桐石州」が父の菩提寺として建立したお寺で、表門から境内全体が一つの茶席として作られています。一人の茶人が全てをプロデュースした茶席が、本堂を除き創建当時のままで残っているのは大変珍しく、書院と高林庵茶室・閑茶室、手水鉢・(つくばい)重要文化財に指定されています。
慈光院は石州流発祥のお寺です。茶道の流派といえば「裏千家」「表千家」「武者小路千家」の三千家が有名ですが、その他にも多くの流派があり、石州流も多くの派に分かれています。
以前にもこの日記に「表具と佛教」というテーマで少し書いたのですが、茶道と表具は佛教(禅)という縁で繋がっています。慈光院は単なるお行儀教室ではなく、こだわらない、とらわれない禅の精神が生きている茶道に触れる事の出来る数少ない場所ですから、機会があれば一度お参り下さい。
最高の御持て成しを受けているような感覚で、いつまでもこの空間の中にいたいと思ったのですが、宿に向かう時間になったので慈光院を後にしました。

ほんまにこの坂を登るの?

今日のお宿は桜で有名な吉野にある「新吉野温泉 辰巳屋」という旅館でした。大型バスでは旅館の前まで行けないので、行ける所までバスで行き、そこまで旅館からマイクロバスが迎えに来てくれるという事でした。
この「行ける所まで」というのが曲者で、こんな所をバスが走ってもいいのかと疑いたくなるような狭くて曲がりくねった急な上り坂をぐんぐん登って行くんです。対向車が来たらどうするのでしょう? 桜のシーズンだったら間違いなく立ち往生ですね。(笑)
そうこうするうちにバスはロープウェイの山上駅に在る駐車場に着きました。
宿のマイクロバスに乗り換えて辰巳屋さんへ。オフシーズンで日曜から月曜にかけての泊まりでしたから完全貸し切り状態で、サービスも良かったです。宿に着いたら抹茶と吉野葛が出ました。
夕食まで時間があったので温泉へ。その後、大広間で夕食(宴会)。食後は部屋でテレビを見ながらゴロゴロ。0時前には夢の中でした*4

*1:危ない人じゃないよ。(笑)

*2:またマニアックな…。(笑)

*3:あの様子では、きっと良い仕事は出来ないでしょうね。ところで彼は「表装技能士」なのかなぁ?

*4:だって、遊びに行くところなんて無いんだもん。(笑)